チャネルスイム
イギリスではドーバー海峡を「イングリッシュ・チャネル(English Channel)と呼び、ここを泳いだ人を「チャネル・スイマー」と呼んでいます。
ドーバー海峡を泳いで渡るには、英国沿岸警備隊の認定を受けた組織に申し込むことが第一です。この組織は現在二つあり、一つはCSA(Channel Swimming Association Ltd:http://www.channelswimmingassociation.com/index.shtml)で、もう一つはCS&PF(Channel Swimming & Piloting Federation:http://www.channelswimming.net/)です。
 今回はCS&PFに申し込みましたが、CSAもルールや申込手続き、費用などがほぼ同じなので、以下は"協会"として話しを進めていきます。


 ルール
水着は「標準的な水着」と指定されており、ウェットスーツの着用は禁止されています。最近オリンピックにも出てくる全身を覆っている水着が「標準的な水着」かどうかは私の判断ではありませんので、協会にお問い合わせ下さい。ただ、今までに全身を覆う水着で参加したスイマーを見たことがありません。尚、脂類を身体に塗ることは認められています。

スタート・ゴールは、海水から身体の全てが出た状態を言います。また泳中に船に捉まる、他の泳者の手を借りるなどは禁止されています。尚、ソロの場合、1時間まで伴泳することが認められていますが、伴走船に同乗しているオブザーバーの指示に従ってください。

「ソロ」とは終始独泳で、始めから最後まで一人で泳ぎます。「リレー」とは6名1チームで、1名1時間づつのローテーションで泳ぎます。順番の変更やスイマーの代替は認められていません。交代は現在のスイマーから次のスイマーが追い越した段階で交代になります。これもオブザーバーの指示に従ってください。

以上はよく聞かれる質問の答えですが、詳しいルールは協会のサイトに掲載されていますので、それをご覧になってください。

尚、ウェットスーツ着用、6名以外のリレーなどに対応するよう協会側が変化していますが、オフィシャルではありません。これも詳しくは協会のサイトをご覧下さい。

 申し込み

まずは協会に問い合わせて泳ぐ期間について聞き出すことと、伴走船の予約を取ることです。

・泳ぐ期間について今年(2004)で言えば次の通りです。
8th to 19th July 2004
23rd to 30th July 2004
6th to 15th August 2004
23rd to 28th August 2004
5th to 13th September2004
21st to 26th September 2004
これらは全て「小潮」の期間です。

・伴走船については協会に登録してある船でなければなりませんが、パイロットを紹介してもらい、直接交渉で予約をします。これで「期間」と「泳ぐ順番」が内定します。「泳ぐ順番」とは、一つの期間で一つの伴走船が受け入れたスイマーの泳ぐ順番を指しています。普通、伴走船が予約を受け入れる数は3組までで、早く予約を取れば泳ぐ順番が指定できますが、予約が遅ければ空いたところに入る以外ありません。ちなみに「1番予約」がお勧めですが、これを取るには1年くらい前から予約をしなければなりません。
 次・・・と言うか、同時進行ですが協会へ申込をします。全てのスイマーは協会に登録しなければなりません。年会費、登録料などはカードによる支払いで済みますが、船のデポジット(頭金)は「現金書留」か「銀行振込」などによる送金になります。
そうすると協会から「インフォメーションパック」が郵送されてきます。
インフォメーションパックの中味は
1.MEDICAL APPLICATION FORM(診断書)
2.APPLICATION FORM(申込書)
3.Zakster Charter ~ 2004 swim season(伴走船との契約書)
です。
1.は自分の名前を書く欄にサインをいれるくらいで、あとは病院に行った医師が書く欄ばかりです。問診とレントゲン撮影があります。
2.は住所、氏名、年齢、職業、申込のスイムタイプ(1Way、2Way、3Way、その他  ソロ、リレーなど)、泳ぐ期間、順番、パイロット名、伴走船名、スイムにおける今までの経歴、ドーバーの滞在地及び期間などを記入します。
3.はチャーター船との契約で、住所、氏名、年齢、職業などを記入し、「費用は沈滞無く支払う」とか、「事故が起きたときに異議申立てをしない」とか、「伴走船パイロットの指示に従う」とか、「失敗しても文句は言わない」とか・・・。「合意」出来れば最後にサインを入れます。
全て記入された書類を協会に郵送します。
協会から「申込書と送金が届いた」と言う手紙と「メンバーシップカード」が郵送されてくれば、いちおうこれで申込は終わりです。
 ただスイマーにそれほどの「実績」が無い場合、「15℃の海水で6時間泳いだ証明書を提出する」(ドーバーに到着してからその泳ぎをしても良い)と言う宿題が出される場合もあります。(この宿題はソロのみで、リレーにはありません)

 今回申し込んだ詳細は、次のようになっています。
スイマー-藤田美幸
泳ぐ期間-7月23日〜30日
泳ぐ順番-2番目
水泳タイプ-2-ウェイソロ
パイロット-ニール・ストリーター


 宿泊場所
インフォメーションパックには協会が推薦する宿の紹介もありますが、別に「指定」ではありませんので各自が自由にドーバー付近の宿に予約することができます。また申込書には滞在する宿の連絡先と滞在期間を記載しなければなりません。したがって申込書を郵送するまでに「宿の予約」を取らなければなりません。また、その宿に到着直後、協会に電話をし、宿に到着した連絡を完了しなければなりません。
 ちなみに今回我々が宿泊した「メゾン・デュー・ゲスト・ハウス」はココです。
http://www.maisondieu.co.uk/

 飛行機
日本からドーバーまでは、普通「航空機利用」になると思います。飛行機会社各社が夏(7月以降)の料金設定をするのが3月下旬から4月上旬にかけてですから、その頃に予約を取る方が「早割」などもあって良いかと思います。

今回我々は昨今の「テロ騒動」などがあったため、イギリス(ロンドン:ヒースロー空港)ではなく、フランス(パリ:シャルル・ド・ゴール空港)にしましたが、こんな心配が無い世界に早くなって欲しいものです。

「ヒースロー〜ロンドン」及び「ロンドン〜ドーバー」は、電車・バスがあります。また「ドーバー〜ヒースロー」を結ぶタクシーもありますので、人数がタクシーの定員いっぱいくらいならその方が安く済みます。

パリからドーバーは、ユーロスター(国際特急電車)でユーロトンネルを抜け、アッシュフォードからドーバーに戻る方法と、「電車+船」と言う方法もあります。今回我々はシャルル・ド・ゴール駅からTGV(フランス特急電車)でリール。リールから在来線でカレー。カレーから船でドーバーに行きました。他にベルギーのブリュッセルから入る手もあるかと思いますが、詳しくは旅行用の本などをご覧下さい。

 荷物
今回は運搬の軽量化を計るため、「現地調達できる物は持って行かない」と決めていました。衣服もこまめに洗濯をしました。(コインランドリ―はドーバーにもあります)
「泳ぎ」以外でも海の持物の基本は「晴れても雨支度、夏でも冬支度」です。

雨具(カッパ) 船上で傘はダメです。
コート 最近、水泳の選手がよく着ている物が良いようです。
水着 脂類が付くので新品ではなく、着慣れた物でハデ目の方が海では良いようです。
スイムキャップ シリコンが保温に優れているので、シリコンキャップを。
スイムゴーグル クリア(夜間用)、淡いカラー(曇天用)、濃いカラー(晴天用)の3つ
耳栓 耳に冷水が入ると頭の中が"キーン"と痛くなります。これを予防するために耳栓をしますが、耳栓によってストレスになるといけないので、耳に合った物を使用します。柔らかいゴムで耳の穴の形状をしたものもありますし、粘土状のシリコンで耳に挿入すると耳の穴の形に変形して入ってくれるものもあります。こういったものがお勧め。
ビーチサンダル ドーバーのビーチは"小石"なので、裸足で歩くと痛いです。
脂類

現地調達−日本では一般的に「ワセリン」(石油から作る)を使用していますが、私は「ラノリン」(羊毛から作る)を薦めています。理由は比較してラノリンの方が落ち難いのと、水を吸収して膨張するからです。しかし「落ち難い」を嫌がるスイマーもいます。今回は"現地調達"でして、イギリスでは脂類を「グリース」と呼んでいました。成分についてはわかりませんが、ワセリン8に対してラノリン2というような感じでした。

日焼け止め 最近は「クラゲ避け」の成分が入っているものもあります。
脂落とし 脂類や日焼け止めを落とすときに使用。
ケミカル・ライト 現地調達ーよく最近のコンサートなどに行くと観客が細いライトを手にして振っている光景をよく眼にしますが、これがケミカル・ライトです。イギリスでは「ライト・スティック」と呼んでいました。これは夜間泳の時に、スイマーの頭部や背部に着けてホタルのように泳ぎます。日本では防災用品の売り場でよく眼にします。最長で6インチ。この6インチのものを使用します。外の管(塩ビ)の中にもう一つの細い管(ガラス)が入っており、中のガラスを折ると溶液が混ざり合って発光します。発光時間は「8〜12時間」とありますが、6時間くらいを目安に交換しましょう。尚、日本においての私の実験では「オレンジ」が1番目立ちましたが、フリーダからは「グリーンが良い」と言うことでグリーンを使用しました。
使い捨てカイロ 貼るタイプ:100枚 これは火の使えない船内で、スイマーの栄養補給食品の加熱に利用します。(冬に買っておくこと)
保冷バッグ 名称は「保冷」でも、原理は「保温」と同じなので、スイマーの食材にカイロを貼り、バッグの中で加熱します。だいたいスイマーが喜ぶ60度くらいまで加熱されますが、そこまで過熱する所要時間は4〜5時間で、使用する時間を計算してから食品を作らなければなりません。
ハイゼックス 耐熱性ポリエチレン製袋:30枚くらい 名前を見ると「凄い物」を想像するかもしれませんが、10cm×30cmくらいのタダの袋。本来は災害地での「ご飯炊き用袋」ですが、食材の加熱する目的は変わらないので使用しました。栄養補給食の加熱(カイロを貼る)に使用。
輪ゴム 100個くらい ハイゼックスを閉めるのに使用。他にもケミカルライトを水着やスイムゴーグルに取り付けるのにも使用しました。他にもいろいろと活用出来るので便利だし、たいした荷物にもなりません。
水温計 海水温を計るのに使用。本番では紐で船からぶら下げて使用しました。しかし今回の場合、船舶に水温の計る機能がついていて、それを使用しました。ところが船の計る水温と、私の水温計から出る温度は1度違いがあり、船の方が高いのです。人間水温計(私が触れて計る:自慢ではないが、それほど誤差はない)では低いほうが正しいと思われましたが、オブザーバーの記録(公式記録)では船の方を使われました。だが私は今回の水温が17度だと信じています。
GPS 船にも付いていますが、それを見に操舵室まで行くのは迷惑と思われました。私のGPS(ハンディタイプ)には過去の航跡が残っています。それを参照しながらスイマーにサポートするため、私には必要不可欠でした。
時計 腕時計で充分。
海図 チャート:現地調達 GPSの緯度経度を海図に参照して現在地を割り出します。オブザーバーやパイロットがやってくれるので必要ないかもしれませんが、協会では1時間に1回しか計測しません。私は20分に1回計測しているので、精度は私のほうが高いと思っています。
検査着 レントゲン撮影に使用する青い紙製の検査着。スイマーは泳ぎ終わった後、海水やら脂類やらでかなり汚れています。この水分や脂分を吸着させるのに紙製の検査着は非常に良かった。協会の連中も「これは良い!」とお墨付きをもらったくらいです。海から上がったスイマーにこの検査着を着させれば、その上からコートを着させてもコートが水や脂で汚れることはありません。
飲み物用
スクイズボトル
スポーツ用 ボトルにストローが付いたもの。速く飲ませるにはボトル自信が柔らかい素材でできたものの方が良い。飲むときに手で押せば嫌でも飲み物が出てきます。
流動食用
スクイズボトル
介護用 ボトルにストローが付いたものですが、「ストロー」と言うよりも「楕円形の柔らかい管」と言った方が良い。本来は身体の弱くなったお年寄りが具材の入った汁類を寝ながら飲むのに使用します。今回は「お粥」、「甘酒(アルコール無し)」を飲ませるのに使用しました。
ロープ スクイズボトルに縛って船から投げて渡します。スイマーが止まると船は風に流される一方になるので、径が5mmの化繊ロープ30mを使用。それでも船とスイマーの間はピンとロープが張ることもありました。
タオル (ウェス) 首など検査着ではカバーできない部分で、脂類がはみ出している部分に使用しました。首などはマフラーのように巻いてしまう。
ジャージ上下 練習直後の身体を温めるときに使用します。
ニットの帽子 泳ぎ終わった後の保温に使用します。
手袋 泳ぎ終わった後の保温に使用します。
着替え 下着などは軽量化を計るため、3枚程度にしました。コインランドリ―はありますし、緊急時にはデパートに直行。
お風呂用品 現地調達 シャンプー・リンス類は現地で調達して現地で使いきれば、行き帰りの荷物にはなりません。
洗面用品 女性はよくわかりませんが(藤田さんは持参した)、私の場合は現地調達。
裁縫用品 何かと使うことがあります。
パジャマ B&Bは日本のホテルと違って寝間着は出てきません。
栄養補給食 アミノバイタル(ゼリー:15) 甘酒(ノンアルコール:4) 卵粥(5) インスタントコーヒー(現地調達) 紅茶(ティーパック)(現地調達) 砂糖(現地調達) ポカリスエット(粉末:5) アミノ酸(粉末) スープ マキシム(炭水化物:現地調達) フルーツシュガー(果糖:現地調達) チョコレート(現地調達)
その他  ティッシュ
薬品(目薬 シップ薬など)
目覚し時計(部屋にあったので必要無かった)
カメラ(フィルムは現地調達:しかし日本より高いので用意した方が良いかも・・・)
コンセント変換機
土産品など

 CS&PF

名称:CHANNEL SWIMMING & PILOTING FEDERATION.
 ホームページ:http://www.channelswimming.net/ 
        http://www.channelswimming.com/ 
 メールアドレス:michael.oram@btinternet.com  
 代表者:Hon. Sec. - Michael Oram, マイケル・オラム
住所:The Hermitage, 12 Vale Square, Ramsgate, Kent, CT11 9BX 
 Tel+44(0)1843 852858 Fax:+44(0)1843 852772


 宿について

―ステキな宿―
メゾン・デュー・ゲスト・ハウスはイギリスでは一般的な「B&B(ベッド&ブレック・ファースト)」です。B&Bは、ベッドと朝食を提供してくれる日本で言えば「民宿」のようなものです。

2002年に泳いだ「1Way リレー」のときにこの宿を利用しました。このチームに藤田さんも参加しているので、地理や内容について知っていると思ったからですが、2002年のときに藤田さんは「毎日同じ朝食に耐えられない・・・」と食べずに泳ぎに行っていたことがありました。今回も「朝食抜きで良い」と言っていましたが、朝のエネルギーはかかせないので藤田さんの好みを聞いて、少し朝食のアレンジをしてもらいました。こんなワガママが利くこの宿は、やはり素晴らしいと思います。

イギリスの朝食は「イングリッシュ・ブレックファースト」と呼んで、フレッシュ・ジュース、ヨーグルト(×)、シリアル類(×)、卵、ソーセージ(×)、ベーコン(×)、マッシュルームのソテー、焼いたトマト、ベイクド・ビーンズ(×)、ブラック・プディング(血やレバーのソーセージ)(×)、トースト(バター、ジャムなどは好みで)、コーヒーか紅茶、とこれが毎日続きます。
尚(×)は、藤田さんが断ったもの。その代わりにフレッシュ・フルーツ(バナナ、りんご、洋ナシ、オレンジなど)が出されました。


 行程など

7月23日から30日までの間に泳ぎます。我々は泳ぐ順番が2ndですが、ひょっとして23日に泳ぐかもしれませし、30日になるかもしれません。コンディションや疲労を考えれば少なくとも22日と31日は「休息日」として余裕を持っておきたいものです。したがって21日までにドーバーに到着するよう配慮し、帰国は8月1日にしなければなりません。

飛行機は今回が「ソロ」と言うこともあり、経由便より直行便の方がスイマーに負担が掛からないだろうと考えました。日本からイギリス(フランス)までの直行便の多くが日本を朝方に発って現地に夕方到着します。この場合、飛行場からドーバーまでの移動が不便で、ほとんどはロンドン(パリ)に1泊することになります。何処の国でもそうですが、都会のホテルは値段が高い。そこでコスト削減と時間の有効活用として「夜行便」を選びました。

また7月19日に城ヶ島の大会を行ない、その器材の運搬と片付けを20日に行なわなければなりません。このような作業を行なうため、おのずとから20日の夜行便になりました。帰りも行きと同様、コスト削減と時間の有効活用のため「夜行便」を選んでいます。

ただ愛知県まで帰る藤田さんが成田に午後6時に着いたのでは、その日のうちに家まで帰れるかどうか不安なので、成田でホテルを予約しました。またこのホテルでは、15日間クルマを無料で駐車させてくれるサービスもしていましたので、東京〜成田間はクルマ移動にしました。
 しかし今考えると、飛行機はエコノミーではなくビジネスくらいの方が良かったかもしれません。フライト時間約12時間のエコノミーはやはり疲れます。