―水深―
18時、目的地まで16.2km。波高1.5〜2m。方位149度。南西の風、15ノット。水温17℃。ピッチ62。マキシム+紅茶+フルーツ・シュガー。フランスがハッキリ見える。キンちゃんは盛んに足を痛がる。
時折大型船がやけに接近して往来する。ニールはマリンVHF(無線)を使って避航するよう依頼するが、ときにそれはその願いが届かなかったりすることもある。オブザーバーは双眼鏡でその船名をチェックする。
ドーバー海峡の水底の構造はちょっとおもしろい。最も深い部分でも水深は40m程しかない。海峡中央部分にフランスやイギリスと平行して浅瀬が壁のように連なっている。この壁の頂点の水深は20m程しかない。つまりフランスとイギリスの間に溝が平行して掘られていると思っていただければ良い。
船舶航路はこの溝を利用した左右で"右側通行"として航路標識なども設定されている。したがってこの航路を横断する場合、船舶の喫水は20m未満に限られる。もし20m以上の喫水を持つ船舶だったらば、この溝に沿って航行しなければならない。
おそらく異常接近してきた大型船舶は、この20m以上の喫水があったからだと思われる。しかしスバは「操縦性能制限船」の表示をしているのだから、本来はその大型船が我々の通過を待たなければならないのだ。しかし浅い海で泳いでいる人の通過を待たなければならない大型船パイロットの心境を察すると・・・。ゆっくり通過してくれれば良いかな?
ちなみに船の全長が200mを越すと「巨大船」と呼ぶようになる。巨大船の満載喫水は30mに及ぶものまであって、これではドーバー海峡の航行が不可能になる。したがってドーバー付近に巨大船の存在は無いが、日本では太平洋岸が「日本海溝」で覆われている。日本海溝の水深は1,000m以上も結うにあるのだ。だから喫水が30m程度の巨大船でも屁の河童。逆に日本海溝を探るには「深海」などの特殊な潜水艇を使わなければならない。「遠泳」を考えると日本付近では巨大船も往来するので、海の泳ぎが停滞するのかもしれない。
1974年にマラッカ海峡(インドネシア=>マレーシア)を泳いだことがあって、ここも水深が浅い。天候が悪く海が荒れると座礁を避けるため、海峡内に大型船は入って来ない。ところが天候が回復すると入って来る。それも先頭の船は探知機で深い場所を探しながらの"ノロノロ航行"をし、その後ろには蟻の行列のように大型船が数珠つながりに連なる。しかもそのほとんどが「×◎丸」と言った日本船舶で、石油運搬などのタンカーだ。その隙間を塗って泳ぐ。そのスリリングなこと。