レース概況

今年のソロ完泳者は男性87名、女性25名。1位は全豪No.1 Open Water Swimmerのマーク・サリバ選手で4時間8分34秒だった。レースの模様は現地のいくつかの新聞で報道されていた。日本から参加した私たちのスタート前の写真も載っていた。また、順位表も見ることができる。ここに示した記事ではないが、レース翌日、海人クラブの大貫さんから見せていただいた新聞をざっと見たら、次のように書いてあった。
「レース開始から3時間半までは絶好の追い風が吹き、彼の持つ4時間0分台の記録を更新し、4時間の壁を破る好記録が期待された。しかし、その後右手方向からの強い流れに阻まれ、記録達成はならなかった。」

私ことヤスは、目標の6時間から約1時間遅れの7時間12分41秒でゴールした。1位のマーク・サリバ選手より約3時間後のゴールだ。ということは、私の場合、新聞記事にあった強い右手方向からの流れに3時間半も悩まされていたことになる。この流れは例年の逆方向だった。予想とは逆だったために、ほとんどの泳者が予期せぬ左方向にかなり流されていた。その他の条件としては、冷夏の影響により少し低水温だったことに加え、いつもより少しSting(強力なくらげ)も多かったとのこと。総じて例年より困難なレースだったようだ。ちなみに、順位結果は男子51位、男女総合67位だった。
レース前夜
さて話はレース前夜。夕食どきになると、ハルさん夫妻のほかに隣の部屋からも人が集まってきた。ハルさんは料理に腕をふるっている。(実はコッテスロー滞在中、何度もご馳走になった。うまいのだ。)自分は明日のレースの補給飲食料をせっせと作っていた。メインの補給は、カーボショッツ(どろどろ甘い液体)とアミノバイタルウォータチャージ。全部出来上がる前に、食事が始まった。メニューはハルさん特製シーフードパスタ・大盛りサラダなど、色もあざやか。そして4人用コンドミニアムに10人ほどのOWS仲間が集まると、とてもにぎやかだ。うまいめしと仲間。幸せの時間・・・

残念ながらこの時の写真が無い。この写真は別の日、隣のハニーポッサムチームにお呼ばれして乾杯。コッテスロー滞在中はこんな風に、お互いにお招きしながら、食事を楽しんだ。しかし、このレース前夜の夕食ではいつも以上になにか特別なものを感じた。皆とともに食卓に座ろうとしたとき、なんともいえない幸せを感じ、心ひそかに神に感謝した。
食後は、補給飲食料のつづき。カーボショッツを1本、アミノバイタルウォータチャージを6本、現地で買ったミネラルウォーターの空きペットボトルにつめた。また、日本から持ってきたご飯のパックと梅干でおにぎりを6個作った。けっこう時間がかかり、準備がすべて終わってベッドに入ったのは11時ちかくになっていた。
その夜珍事が起きた。夜半に寝ているあいだ、しゃっくりが止まらなくなったのだ。自分はねぼけていたので詳しく覚えていないが、同室のギリさんには大変お世話になった。ギリさんも明日、チームで泳ぐというのに、私のめんどうを見て、なんとか寝かしつけてくれた。
ありがとう。
スタート
翌朝にはちょっとした失敗をした。朝食にスパゲッティ300gをゆでて、日本から持参した「たらこソース」をかけて食べようとした。しかし、なんだかまだ、麺が棒のように固かった。食べると芯がある。ゆで時間を間違えたのだ。あわててスパゲッティの袋を見ると、小さな字で15minとあるではないか。前夜の夕食で使った銘柄と同じパッケージだったので、てっきり8minと思い込んでいた。しかしもう遅い。ゆで直している時間はない。自分のおなかを信じて、ばりばりなんとか全部食べた。今となっては笑い話だ。
さあ、いよいよ海峡横断泳。スタート地点に集合した。まだ、あたりは真っ暗。腕にゼッケンをマジックで書いてもらって受付を済ます。15分くらいジョグをして体を温めた。体がほぐれてくると同時に、じわじわと気合を入れていった。
ソロにエントリーした人数は発表されないようだ。完泳した人数だけ翌日の新聞で確認できる。男女合わせて112名が完泳しているので、この日スタートに並んだ人数は少なくとも112名以上いたとしか言いようが無い。午前5時45分にこのソロ出場者すべてが一斉にスタートする。スタートエリアはここまでというような制約はとくに無いらしい。皆、横に十分に広がってスタートを待った。私はその集団の最も右よりの位置をとった。息継ぎを右側でしかしないので、パドラーのハルさんとは集団の右側で落合う予定にしていたからだ。ちなみに、大会本部はこの泳者集団の一番左側。観客や日本からのスタッフはそのあたりにいる。通訳のNorikoさんだけ私のスタート地点に移動して付き添ってくれた。
スタートの合図はどんな音だったか思い出せない。静かなスタートで集中を維持しやすかった。日の出前の薄明かりの中のスタートだ。振り向くとNorikoさんが手を振ってくれている。こちらも手を振り、お別れをした。私がスタート地点に選んだ場所は、たまたま、コッテスローでも一番遠浅なところだった。なかなか泳ぎ始める深さにならない。これからゴールまでの長い時間、自分の泳ぎに集中し続ける覚悟を固めつつ、あせらずゆっくり歩いた。他の泳者も落ち着いている。3回振り向きNorikoさんに手を振った後、ゆっくりと泳ぎ始めた。
スタートして先ずやることは、自分のペースを作ること。トレーニングで身に着けたペース感覚と相談しながら、本番のペースを間違えないように慎重に設定する。このとき、辰巳でハルさんやナオさんと自主練習したときのことを思い出していた。100m、16本のインターバルトレーニングがメインセットだった。一本目からオーバーペースで飛ばしすぎて6本目くらいから疲労が抜けず、大きくペースダウンせざるをえなかった。このことがあって、スタートでの飛ばしすぎには十分注意しなければ、と身にしみた。コーチやハルさんからもスタートでの飛ばしすぎはいさめられていた。本番では、はやる気持ちを抑えてまずまずうまくできたと思う。
次にすることはパドラーとめぐり合うこと。たくさんのパドラーの中から自分のパドラーを見つけるのはそう簡単ではない。逆にパドラーから泳者を判別するのはもっと難しかったそうだ。パドラーのハルさんは、目印になるように、頭に小ぶりのインディアン羽根帽をかぶっている。また、私が右側呼吸なので、泳者集団の右手側で待っているようお願いしておいた。スタートから10分くらいたっただろうか、そろそろ心配になってきた頃、カヤックの集団のなかに羽根帽姿のハルさんを見つけることができた。このときは、迷子が親を見つけたときのような気持ちがして、ほっとした。ハルさんの羽根帽が功を奏した。パドラーと出会えれば、あとはゴールまで泳ぎに集中し続けるのみだ。
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