スティング(強力なくらげ)
ロットネス経験者から、かねて、スティングの話は聞いていた。
いわく、「最初に刺されたときは体に電気が走ったようで何が起きたかわからなかった」。もう一人の経験者いわく、「裸の腕を鉄条網の中に突っ込んじゃったような感じ」。ウワー。
そんな強力なやつに日本でのOWSではまだお目にかかったことがなかったので、内心ビビッテいた。
スティングにはスタート後1時間くらいたったときに初めて出くわした。

以後、約20分に1回くらいの頻度で刺された。一回刺されるとだいたい30分で痛みが和らいでくる。しかしその前に次のやつに出くわすので、終始刺され続けた感じだ。最初の一撃を食らったとき、かねて聞いていた経験者の話にうそはなかったとわかった。
腕に絡みつく衝撃にびっくりして、思わず振り払うように腕を動かした。しかし、そんなことをしても絡み付かれた感覚はなくならないし、痛さも軽減されない。3回目くらいまでは、刺された後、どうしても腕を振り払う動作をしていたが、そんなことをしていては泳ぎの集中が切れてしまいそうだった。そこで、それ以降は、刺されても無視することにした。

ロットネス島が見えて、海底の砂地や海藻の草原がきれいなところまで来ると、いままで刺され続けていたスティングはいなくなって、安心していた。しかしそんな油断したところを最後のスティングに刺された。思わず泳ぎを中断し、だるま浮き状態でうずくまった。ゴールまでの全行程で集中が切れたのはこの時だけだった。後でハルさんから聞いた話によると、この時の様子は、救助が必要なのではと思うくらいだったそうだ。


水温と寒さ


最初にロットネス海峡横断泳の話を聞いたとき、水温が21℃と聞いて、自分には無理だと思った。小さい頃、兄弟や従兄弟と川遊びしたとき、自分だけ寒くて水に入れず、ぶるぶる震えて川原でうずくまっていたことを思い出していた。

ロットネス横断にチャレンジしようと、本気で思えたのは、ちょうど前の年のロットネス横断がおこなわれていたときだった。そのシーズン、12月に誘われて、初めて冬の海練習をしてみた。水温16℃の海に素肌で入水したときは一瞬呼吸できないほど、パニック状態になった。しかしその後、気を落ち着けて泳ぎ続けると、体がポカポカしてきた。海水もきれいで、小魚の群れが見えたりして楽しかった。このとき初めて、ロットネス横断のソロを自分でもやれそうだと思った。その後、1月14℃、2月12℃、3月10.5℃の海でウェットスーツなしの練習を繰り返し、自信がついた。翌シーズンは1月に11℃の海で練習をした。これらの練習のおかげで、低水温での自分の可能性と限界を把握できるようになった。

実際のレースでは寒さをほとんど感じることがなかった。スタートから5時間ほどのとき、体の芯が少し寒さを感じたけれども、自分の限界まではまだまだ余裕があった。ロットネス島に近づくと海水温は若干高くなり、少し感じていた寒さも去り、海水温の面では心配はなかった。



続く

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